店主の雑記帳 : お酒編・その1

2005年2月25日 〜


2005/2/25

カクテルについて
そういえば、バーのホームページなのにお酒の話題がありませんでしたね。遅ればせながら少し前から、何かお酒の話題をと思っておりましたところ、案の定、お客様よりご指摘を頂戴してしまいました。と言うことで、まずはカクテルのお話です。

カクテルを形で大まかに分類すると、ショート・ドリンクスとロング・ドリンクスの2種類となります。

ショート・ドリンクスは通常、脚のついた所謂カクテル・グラスを用います。カクテルの材料をシェーカー、またはミキシング・グラスにて氷で冷やしながら混ぜて造ります。材料の合計は60ml(=2オンス)ですが、氷が溶けてカクテルは70ml〜80ml位の分量になります。
カクテルが冷えている間の短時間で飲む飲み物ということで、ショート・ドリンクスと呼ばれます。材料によっては時間が経つと分離してしまう場合もあるので、分離しない間に飲んでねという意味もあるようです。

ロング・ドリンクスは通常、10オンス(300ml)から14オンス(420ml)程の大き目のグラスに氷入りで造ります。グラスは円柱形のタンブラーや、より細長いコリンズ・グラス、脚のついたゴブレット・グラス等を用います。通常、お酒を清涼飲料水等で割り、氷を加えて造ります。
こちらは氷が入っていることから、比較的長い間、冷たく美味しい状態が保てますのでショート・ドリンクスに比べてゆっくりと時間を掛けて楽しむことができます。このことから、こちらの形のカクテルはロング・ドリンクスと呼ばれます。

ショート・ドリンクスには口当たりの良いものが多いので、ついつい飲み過ぎちゃったという経験の有る方も多いと思います。ショート・ドリンクスはお酒とお酒を混ぜて造るものが多く、アルコールの度数で言うと結構高目のものも多いです。

アルコール度数の高い例ですが、有名なところでマティーニの場合、ドライ・ジン45mlとドライ・ベルモット15mlをミキシング・グラスで混ぜて造ります。弊店の場合はゴードン・ドライ・ジン40°とマルティニ・エキストラ・ドライ18°を用います。氷が溶けて70mlのカクテルができたとすると(細かい計算は省きますが)約30°のお酒となります。
一般的なウイスキーのアルコール度数は40〜43°ですので、40°のウイスキー換算で52.5ml(=1.75ショット)を飲むことと同じアルコールを摂取していることとなります。

次の例はホワイト・レディです。弊店ではゴードン・ドライ・ジン40°30ml、コアントロー40°15ml、レモン・ジュース15mlで造ります。この場合には約26°のお酒となり40°のウイスキー換算で45ml(=1.5ショット)と同等のアルコール摂取となります。

なお、弊店のメニューにはアルコールを含まないカクテルも2種類ありますので、ご興味がありましたら一度オーダーされてみては如何でしょうか(ちょこっとCM)。

カクテルに限らずお酒の飲みすぎには注意して、美味しいお酒を一生涯楽しみましょうね。

2005/3/2

カクテルについて・その2
またまたカクテルのお話です。
カット・フルーツ等が添えられているカクテルを時々目にすることがあると思います。
このフルーツって食べちゃっていいのかどうか、良く分からないですよね。
実は食べるために添えられているものと、飾りとして添えられているものとは簡単に見分けることができます。

カクテル・ピンが刺さっているものは食べるためのもので、ガーニッシュと呼ばれます。
マティーニに添えられているカクテル・ピンに刺さったスタッフド・オリーブは良く見かけるのではないかと思います。
オリーブの他に、マラスキーノ・チェリーやカクテル・オニオンがガーニッシュとして良く用いられます。マラスキーノ・チェリーの緑色のものは特にミント・チェリーと呼ばれます。
カクテル・オニオンは小さいオニオンの塩漬けで、ホワイト・オニオン、パール・オニオンとも呼ばれます。
また、カクテル・ピンはガーニッシュ、カクテル・スティックとも呼ばれるそうです。

カクテル・ピンが刺さっていないものはデコレーションと呼ばれ、その名の通り”飾り”ということで食べるものではないそうです。
通常、デコレーションはカクテル・レシピの上では任意となっていますので、同じカクテルでもお店によっては凝ったデコレーションであったり、反対にデコレーションは無かったりと、見た目がかなり異なっていることと思います。

ちなみに、弊店ではデコレーションなるものにはお目にかかれませんので、予めずご了承の程、どうぞ宜しくお願い申し上げます。(結局この言い訳のための説明か!ってつっこまないで下さいね。)

2005/3/9

お酒の分類について
今回はお酒の分類についてのお話です。
お酒は造り方によって3種類に分類することができます。
造られてきた順番に並べるとワイン(醸造酒)、スピリッツ(蒸留酒)、リキュール(混成酒)の3種類ということになります。

ワイン=醸造酒=発酵により造られるお酒 ということですので、葡萄酒以外に日本酒やビールもワインの1種ということになります。
詳細な表現では、葡萄酒=グレープ・ワイン、日本酒=ライス・ワイン、ビール=麦芽ワインということになります。

スピリッツ(蒸留酒)は糖質(果実類)、または澱粉質(穀類)を原料として糖化し、発酵させこの発酵液を蒸留して造られるお酒です。
ウイスキー、ブランデー、ジン、ウォッカ、ラムという5種類の蒸留酒が世界の5大蒸留酒と呼ばれます。これにテキーラを加えて6大蒸留酒と呼ばれることもあるそうです。

色のついているリキュール(混成酒)は通常、蒸留酒をベースとして、これに薬草、香料植物、果実、果皮等を漬け込んで成分を抽出し、濾過した後、砂糖で甘みをつけ、着色料で色調を整えて造られます。
無色透明のリキュールは通常、蒸留酒をベースとして、これに薬草、香料植物、果実、果皮等を漬け込んで、成分を抽出し、これを再度蒸留して砂糖で甘味をつけて造られます。リキュールはカクテルの副材料、ケーキの材料、食後酒として良く用いられます。

うーん、今回は漢字が多くてちょっぴりアカデミック(?)な内容でしたねー。

2005/3/16

ウイスキーの産地別分類について
ウイスキーは産地別に大きく5種類に分類することができます。
その5種類とはアイリッシュ・ウイスキー、スコッチ・ウイスキー、アメリカン・ウイスキー、カナディアン・ウイスキー、ジャパニーズ・ウイスキーです。

アイリッシュ・ウイスキーはアイルランドで造られるウイスキーで、歴史的には最も古く、12世紀には既に造られていたとのことです。第一次大戦前には140を超す蒸留所があったそうですが、現在では2箇所のみとなってしまいました。

スコッチ・ウイスキーはスコットランドで造られるウイスキーです。ただし、スコットランドの貯蔵庫で、3年以上オーク樽で熟成させたものでなければスコッチ・ウイスキーと言うことはできないそうです。
スコッチウイスキー協会では、スコッチ・ウイスキー誕生の年を1444年と定めているとのことです。現在も100を超す蒸留所があります。

アメリカン・ウイスキーはアメリカで造られるウイスキーで、普通はバーボンと呼ばれていますね。バーボンは元々はケンタッキー州のブルボンという土地で造られたウイスキーの呼称でしたが、現在ではケンタッキー州内で造られるウイスキーをバーボン・ウイスキーと呼びます。ケンタッキー州はかつてフランス統治領だったことからフランス人が多く、そのフランス人達がブルボン王朝を懐かしみ、偲んで土地の名前にブルボンとつけたそうで、これがバーボン・ウイスキーの名前の由来なのだそうです。
ところでアメリカン・ウイスキーとして有名なジャック・ダニエルですが、こちらはテネシー州で造られているので、バーボン・ウイスキーではなく、テネシー・ウイスキーということなんですね。

カナディアン・ウイスキーはもちろんカナダ産のウイスキーです。世界的には最もライトな風味のウイスキーとして知られているそうです。代表的なカナディアン・ウイスキーとしてカンディアン・クラブが挙げられます。頭文字をとってよく「C.C.」(シー・シー)と呼ばれていますね。

最後にジャパニーズ・ウイスキーです。
大正10年に寿屋(現サントリー)の創業者である鳥井信治朗氏が巨費を投じて山崎工場を設立し、大正7年にスコットランドに留学し大正10年に帰国した竹鶴政孝氏を工場長として迎え、日本のウイスキー造りは始まりました。
その後、昭和4年に最初のジャパニーズ・ウイスキーである白札サントリー(白ラベル)が発売されました。
その後、竹鶴正孝氏は昭和9年に独立し、余市にニッカの最初の工場を設立しました。この時設立した会社の名前は「大日本果汁株式会社」で、その後現在の社名「ニッカウヰスキー株式会社」となりました。
余市蒸留所はこじんまりとしていて、建物群はそこはかとなく昔が偲ばれる佇まいで、(団体見学客の皆さんがいなければ)たいへん落ち着ける所です。機会がありましたら是非、一度足を運んで見学してみて下さい。見学コースの最後には無料の試飲もあります
が、なんといっても1/2オンス単位の有料の試飲コーナーがお勧めです。市場に出ていないたくさんの種類のニッカ特製モルトが楽しめますよん。

ところで各国のウイスキーのラベルをよーく見ると、あれれー、「ウイスキー」の英字スペルが違っていますよー。スコッチ、カナディアン、ジャパニーズは「Whisky」ですが、アメリカンとアイリッシュでは「Whiskey」となってますー。

2005/3/23

ウイスキーの製造方法別分類について
さて、今回はウイスキーの製造方法による分類についてのお話です。

通常、ウイスキーは製造方法別にモルト・ウイスキー(MALT WHISKY)、グレーン・ウイスキー(GRAIN WHISKY)、ブレンデッド・ウイスキー(BRENDED WHISKY)の3種類に分類されます。

まずはモルト・ウイスキーです。
モルト・ウイスキーは麦芽(モルト=糖化酵素が生成された大麦)を乾燥し、麦芽に生成された糖化酵素の働きによって麦芽中の澱粉を糖化し、この糖化液に酵母を加え発酵させ、この発酵液をポットスチル(単式蒸留器)で蒸留してできたウイスキーのことで、ポット・ウイスキーとも呼ばれます。
スコットランドの蒸留所で造られる大部分のモルト・ウイスキーは麦芽を乾燥させる時にピート(ヒース草が堆積して半炭化したもので、泥炭、または草炭ともいうそうです)で燻煙乾燥(スモーキー・フレーバー)するためにピート香と呼ばれる独特の香りがします。

いわゆる「シングル・モルト・ウイスキー」とは、同一の蒸留所で造られた複数の樽のモルト原酒同士を合成(ヴァッティング)して製品化されます。
樽の中のウイスキーのアルコール度数は50度前後ですので、通常は加水してアルコール度数を40〜43度程度に下げています。
「ピュア・モルト・ウイスキー」と呼ばれるウイスキーがありますが、こちらは複数の蒸留所のモルト原酒をヴァッティングして造られるウイスキーです。

次にグレーン・ウイスキーです。
グレーン・ウイスキーは、発芽させない穀類(大麦、小麦、ライ麦、トウモロコシ、etc)を原料として、これに麦芽を加え、麦芽に生成された糖化酵素の働きによって、穀類の澱粉を糖化し、これらの糖化液に酵母を加え発酵させ、この発酵液をパテントスチル(連続式蒸留機)で蒸留したウイスキーで、パテント・ウイスキーとも呼ばれます。

最後にブレンデッド・ウイスキーです。
ブレンデッド・ウイスキーは、モルト・ウイスキーとグレーン・ウイスキーをブレンドして製品化したウイスキーです。
多いものでは、何十種類ものウイスキーをブレンドして造られるようですが、その詳細な内訳については、普通、企業秘密となっているようです。

ブレンデッド・ウイスキーは、1853年、アンドリュー・アッシャー氏によって開発され、これによってウイスキーというお酒がが世界的に認められるようになったとのことです。
その後、1914年の第一次世界大戦時に、軍資金のためにチャーチルによりスコッチ・ウイスキーの増産が計られ、友好国に輸出された結果、スコッチ・ウイスキーは世界的に有名になったそうです。

ところで「単式蒸留器」と「連続式蒸留機」で最後の「キ」の漢字が異なっていますが、これは漢字変換ミスではありませんよ!。このように表記するのが正しいそうでーす。

 (ご参考)
  ウイスキーの名前に「カスクストレングス」という文言がついているものがありますが、
  こちらは樽で熟成されたモルト原酒を加水せずに瓶詰めしたものなので、アルコール度
  数は50度前後と高くなっています。
  ウイスキーの名前に「シングル・バレル」という文言がついているものは、特定の樽の
  ウイスキーという意味で、樽を特定する番号や記号が瓶のラベルに手書きで書かれて
  いたりします。こちらは加水されているものもあれば、加水されていないものもあります。

2005/4/6

ウイスキーの産地別分類について・その2
シングルモルトのスコッチ・ウイスキーは「ハイランド・モルト」、「スペイサイド・モルト」、「ローランド・モルト」、「アイラ・モルト」の4つの生産地域別に語られることが多いようです。

スコットランドの北部の地域で造られたモルト・ウイスキーはハイランド・モルトと呼ばれます。
同じ北部地域ではありますが、スペイ川の周辺にはハイランド地域の蒸留所の半数以上がありますので、スペイ川周辺の蒸留所で造られたモルト・ウイスキーは特にスペイサイド・モルトと呼ばれています。
南部の地域で造られたモルト・ウイスキーはローランド・モルトと呼ばれます。
アイラ・モルトはスコットランド南西部にあるアイラ島(アイレイ島とも呼ばれます)で造られたモルト・ウイスキーです。

上記の他にはスコットランド南西部のキャンベルタウンで造られるキャンベルタウン・モルト、アイラ島以外の島々の蒸留所で造られるアイランド・モルトといった分類もあります。

通常、シングルモルトのスコッチ・ウイスキーのラベルにはスコットランドのどの地域で造られたかの表記があります。この表記は上記の分類の表記の場合もありますが、上記の分類の表記ではないことも良くあります。一般的にスペイサイド・モルトと分類されているものには、ハイランド・モルトと表記があるものが多く見受けられます(マッカランなど)。
また、島々で造られているシングル・モルト・ウイスキーの瓶のラベルには島の名前が表記されていることが多いようです(オークニー島のハイランド・パークやスキャパ、スカイ島のタリスカーなど)。

地域での分類は各モルトの大まかな個性の目安になりますが、同じ香り、同じ味わいのものはありませんので、是非、ご興味をお持ちになったモルトはご自身で味わってみて下さい。
弊店では毎週異なる3種類の組み合わせの「本日のウイスキー飲み比べ」(各1/2オンス=15ml)メニューをご用意しております。ご興味をお持ち頂けましたら是非一度チャレンジしてみて下さいね。(最後はちょこっとコマーシャルでした。)

2006/11/9

ギネス・エクストラ・スタウトって2種類あるの?
先日、お客様との会話の中で、ギネス・ビールのアルコール度数が話題になりました。

店主はその時、はっきりとした数字を憶えておりませんでしたので、在庫のギネス・スタウトを取り出して確認しましたところ5%と記載されていました。

お客様はその時ちょうどギネス・スタウトを飲まれており、飲まれていたビールの裏ラベルをご覧になりましたが、どこに書いてあるのか良く分からないとのことでした。こげ茶色のラベルに小さなオレンジ色の文字で記載されているため、確かに弊店の薄暗い客席ではどこに書いてあるのか良く分かりません。
お客様のギネスをお借りして、店主は「えーっと、ここの隅っこに5%と書いてあり・・・、あれれー、6%でしたー。失礼しましたー。」と言いつつ手元の在庫品のラベルを再度見るとやはり5%とあるではありませんか。
そこで、ほかの在庫をチェックしてみると5%のものと6%のものが混在しています。
この時点では訳が分からず、とりあえず真相究明を宿題にさせてもらった店主です。

運の良いことに、その数日後、ギネス・ビールの輸入元である某国産ビール・メーカー勤務の中学時代の同級生が来店してくれましたので、早速ことの次第を話し、「どうなんてんのー?」と迫った店主です。

その同級生も最初は「正規品じゃないんじゃないのー」などと言っておりましたが、両方の現物を見てもらうとしばらくの間、沈思思考状態になりました。

その後、口を開くと「うーん、これは両方とも正規品だねー。ギネス社がアルコール度数を落としたんだねー。」と簡単に言ってくれるではありませんか。
要するに飲みやすくするために、メーカー側でアルコール度数の変更を行ったということで、過去にも同じことがあったそうです。6%の前は7〜9%(その時聞いた度数を正確に記憶出来ませんでした。ゴメンナサイ。)もあったそうです。

この時とばかり店主は以前から気になっていた別の質問を(お客様でもある)同級生に浴びせます。
店主質問:「ギネスって冷やしていいの?。冷やしたほうがやっぱり美味しいと思うけど」。
同級生回答:「ギネスは冷やして下さい」。

ギネスは本国では常温で飲まれているらしいという話を聞いたことがある店主は、以前から冷やしたギネスをご提供していることに「これで良いのだろうか」と一抹の不安を感じておりました。
同級生の話によると、彼は一時期ギネスを担当していた時期があり、ギネス社の方々が来日された時に、その方々が冷やして下さいと言っているのを確かに聞いたと断言してくれました。

かつてアイルランドではギネス・ビールの栄養価が他のビールより高いことから、肉体労働に従事されている方々が作業の合間に瓶から直接飲まれていて、その光景がギネスは常温という話になってしまったとのことです。
本国では赤ワインの適温程度で日本よりは高めの温度らしいですが、確かに冷蔵されて提供されているとのことです。
ただし、温帯に位置する冷蔵事情の良い日本では、エビス等の通常のビールと同じ程度に冷やして良いのであるぞよとのお墨付きを(同級生から)頂いた店主です。